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今晩は発達障害のある人の就職について書いてみようと思います。
私今でこそアナログゲーム療育なんて言ってますけど、元々は発達障害のある人の就労支援の仕事してたんですよ。
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障害者雇用において企業が最も重視するポイントはどこか。

学歴も資格もそれなりの意味がありますが、なにより重要なのが「就労実績」です。

どんなに高学歴でも難資格を持っていても、どこかの企業で3年なり5年なり働いたという実績ほどの評価は得られません。
というのも、障害者雇用においては手帳の関係上、発達障害は精神障害の一つに分類されるのですが、この精神障害者の退職率が1年で50%以上という調査結果があるんですね。

ですから、企業としては、学歴とか資格よりも、半年や1年で辞めずに長く働いてくれそうか、といったところを第一にみます。
じゃあ就労実績のない新卒はどうしたらいいんだ、という話です。

ご存知ない方も多いので最初にお伝えしておくと、

障害者雇用は基本的に「中途採用」です。

新卒の人は、中途採用の人たちに混じって採用面接を受ける事になります。
障害者雇用に応募する人材は、主に障害が理由で仕事を続けられなくなって、改めて障害者枠で再就職を目指している人が多い。
ですのでどれくらいの仕事ができるのかどういう配慮があればいいのか前職の経験から推測しやすい。

しかし、新卒はそこが真っさらですから企業としては見極めが難しい。
端的に言って、新卒は障害者雇用では不利です。

特に高学歴で好条件を狙っていたりするとなおさら。

ただし、特別支援学校の卒業生は別。

学校として就職実績を積んでいるので、企業は新卒でもこれくらいやれるだろうと見込めます。
学力があってもあえて特支を選ぶ親御さんはこの辺りが理由だと思います。
では、特別支援ではない通常の学歴を経た新卒はどうすべきか。

わかりやすい結論はありません。
しかし、先述の障害者雇用事情を踏まえると、相対的にクローズアップされるのは

「障害をクローズにして一般就労」

という選択です。
つまり「とりあえず普通に新卒で会社入ってみて、やっぱりダメとなったら障害者雇用」という進み方です。

この進み方だと、障害者雇用のときに就労実績があるので企業も見通しがたちやすいですし、本人も自分は何ができて何ができないのか、どんな配慮が有効なのかを説明しやすいのです。
ただし、この方法はリスクが伴います。

障害を隠して配慮なしで働くことの苦しさというのは間違いなくあるでしょうし、そもそも「まずはダメ元で一般就労してみよう」という半端なモティベーションで就活したところで内定が取れるのか、という疑問も残ります。
ただ、就職といっても、エントリーシート何十社も出して、スーツ着て面接受けまくって内定もらうことだけが就職じゃありません。
ご家族やご親戚が事業をされているならそういうところで働いてみるのも一つでしょうし、とりあえず近所のスーパーでレジ打ちのアルバイトから始めるのもアリだと思います。
いずれにしても、進学にあたって障害に配慮ある学校を選ぶのと同じ感覚で障害者雇用を選択するのは危険だと思うんですね。
障害者枠で働くことのデメリットとして、

①募集職種が狭い
②給与が安い
③身分が不安定


というのがやはり大きいので。
もう一つ強調しておきたいのは、

障害者雇用は一般の雇用に比べると年齢のハードルが低い

ということです。

よく「35歳超えると転職は難しい」なんて言いますけど、障害者雇用はそのへんが一番ボリュームゾーンですからね。
多分年代で言うと30代が一番多くて次いで40代、20代なんじゃないかな。
だから20代のうちは色々模索してみて、30過ぎてやっぱり一般就労は難しいとなってから障害者雇用でも全然いける。

むしろ職歴がある分、新卒より有利なんですね。
それからもちろん、一般枠で就職して、最初はいつ障害者枠に移るかと思ってたけど、案外職種や職場環境に恵まれてそのまま普通に働ける、というのも充分あり得ます。
以上のことから、通常の教育課程を経てきた発達障害の人の就職のファーストチョイスは

「障害クローズで一般就労」

です・・・とは断言できないんですけど、そう考えておくのが良さそうな気がします。
また、将来一般就労と考えてこそ教育・療育のゴールもより明確になってきやすいと思うんですね。
それは自身の障害を否定せよということでは決してないですよ。
むしろ言える人には言えて、言うべきでない人には言わないという高度な使い分けが要るので、自分がまずしっかり受容できてないといけません。
クローズ就労かオープン就労で迷っている人はクローズでアルバイトをしてみるといいと思います。実際にクローズでアルバイトをして、「私の場合はクローズ就労だと精神的に追い込まれるため続かない。」と思いました。
そういう経験を踏まえて、障害者雇用に向かえたらいいですよね。
いずれにしても、発達障害の知的な遅れがない、または軽い子の就職を考えるのは難しいですね。

決まった答えがないので。

私はこのトピックを考えるときに
政治学者の丸山真男の「可能性の束」という言葉をいつも思い出します。
ちょっとむずかしいんですけど、以下引用します。

"現実というものを固定した、でき上がったものとして見ないで、その中にあるいろいろな可能性のうち、どの可能性を伸ばしていくか、あるいはどの可能性を矯めていくか、そういうことを政治の理想なり、目標なりに、関係付けていく考え方、これが政治的な思考法の一つの重要なモメントとみられる。”


”つまり、そこに方向判断が生まれます。つまり現実というものはいろいろな可能性の束です。そのうちある可能性は将来に向かってますます伸びていくものであるかもしれない。これにたいして別の可能性は将来に向かってますますなくなっていく可能性であるかもしれない。”


”そういう、つまり方向性の認識というものと、現実認識というものは不可分なんです。それを方向性なしに、理想はそうかもしれないけれども現実はこうだからというのは政治的認識ではない。”


”いろいろな可能性の方向性を認識する。そしてそれを選択する。どの方向を今後伸ばしていくのが正しい、どの方向はより望ましくないからそれが伸びないようにチェックする、ということが政治的な選択なんです。"
 


丸山真男「政治的判断」
重要なのは以下の部分です。


”方向性の認識というものと、現実認識というものは不可分なんです。それを方向性なしに、理想はそうかもしれないけれども現実はこうだからというのは政治的認識ではない。” 


政治的という所を教育的・療育的と言い換えれば、発達障害についても当てはまる話だと思うんです

アナログゲーム療育アドバイザー 松本 太一
フリーランスの療育アドバイザー。
カードゲームやボードゲームを用いて発達障害のある人のコミュニケーション能力を伸ばす「アナログゲーム療育」を開発。療育機関や就労支援機関などで実践するほか、各地で講演会や研修会を開催している。
公式サイト:「アナログゲーム療育のススメ」
Twitter:https://twitter.com/gameryouiku

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