自閉症の特性はみんなにあると示した画期的な研究

(中略)トータルで日本の小中学生2万3千人を対象にして、発達障害の有無にかかわらず、SRSという自閉症尺度の検査を行った。

ph_thumb

一般児童集団におけるASD症状の連続分布。

SRSは対人コミュニケーションをはじめ、自閉症的な行動特性を評価する尺度。全国の小中学校の通常学級に通う生徒たちを対象に広く調査を行った結果、自閉症の傾向は連続しており、グレーゾーンがあることも示された。

Kamio et al.(2013)より引用改変。(画像提供:神尾陽子、こころの健康教室サニタ「心の健康発達・成長支援マニュアル」「第2章:こどもの心のトラブルとその特徴 vi心の問題を抱えやすい発達障害」(岡琢哉、神尾陽子)より転載)

スポンサーリンク


(中略)
結果、おそろしいほどきれいに連続的な分布が得られた。
定型発達する人たちの中にも分布がある中で、その片方の裾野がひたすら長く連続しており、まさにスペクトラムである。

このうち裾野にいるスコア上位者の2.5パーセントくらいは、診断がつく自閉症スペクトラム症かもしれないが(もちろんこれはあくまで一つの尺度にすぎないのでこれだけで決まるわけではない)、それよりも印象的なのは、「定型」の中にも分布があり、その一部は、ほとんど「非定型」に近いスコアの人もいることを、説得力のある図像とともに示していることだ。
かつて言われていたような「正常と異常」「健常と障害」というくくりで語られるものではないことは明らかだ。 

こういうことは、臨床医たちも研究者たちも薄々気づいていたし、それは世界各国でも同様だった。だから、2013年に改訂されたアメリカのDSM-5で、自閉スペクトラム症の概念が提案されたわけで、臨床医の側も大枠ではすんなりと受け入れることになったのだった。

もちろんかつて一部の臨床医たちが、「正常な人までスペクトラムに入れるんですか」「過剰診断につながるんじゃないんですか」などと言ったことにも、正当な理由がある。

20世紀、自閉症の診断を受けること自体が強烈にネガティブなスティグマ(烙印)として機能した時代があり、その頃を知っている臨床医ほど、最初、受け入れ難いと感じたのではないだろうか。
しかし、結果的に、「正常と異常」が本質的なものとして決定されているわけではなく、あくまで連続的なもののどこかを切るのが診断なのだと明らかになることで、スティグマの絶対性は弱まったかもしれない。
また、今、自閉スペクトラム症をはじめとする発達障害の本を読んだ人のかなり割合が、診断はつかないにしても、自分の中に共通する特徴を感じてやまないのも、こういった「スペクトラムとしての自閉症」という症候観にそぐうものだ。

「ただ、この曲線は、あくまである評価の仕方に基づいたものだと理解してください。実際のところ、自閉スペクトラム症には、もっと様々な要素が絡みます。つまりスペクトラムは1次元ではなくて、多次元で、おまけに時間変化するんです。これがあまりにも複雑で、最近の海外の研究チームでは、何万人レベルで追いかける研究の統計的な扱いのために宇宙物理学者を招き入れているところもあるくらいです」

全文はソースにて
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00112/00041/?n_cid=nbponb_twbn

反応&感想

スコアが高く自閉症傾向が強い人から、スコアが低く定型的な発達をしている人まで、切れ目なくつながっている。
どれくらいのところで切っているかによって、診断される数も変わる。

スペクトラムは1次元ではなくて、多次元で、おまけに時間変化する。
 https://twitter.com/NatGeoMagJP/status/1256059757938573314 
「「正常と異常」が本質的なものとして決定されているわけではなく、あくまで連続的なもののどこかを切るのが診断」  https://twitter.com/akinaln/status/1275219620631199745 
実は自閉症の特性はみんなにある。ワタシもこれ思ってました。違いは、それが表に出るか出ないかだけなんじゃないかなって。  https://twitter.com/akinaln/status/1275219620631199745 
おもしろい。
“つまりスペクトラムは1次元ではなくて、多次元で、おまけに時間変化するんです。これがあまりにも複雑で、最近の海外の研究チームでは、何万人レベルで追いかける研究の統計的な扱いのために宇宙物理学者を招き入れているところもあるくらいです ”  https://twitter.com/akinaln/status/1275219620631199745 
自閉症の特徴とは連続的かつ多面的なもので、そこに時間的な要素も絡んでくるため、単純に解釈できるものではないと。

興味深い記事でした。  https://twitter.com/akinaln/status/1275219620631199745 
当事者はだいたい知っていたけど、健常者はあまり知らないか関心が無い部分の話ですね。  https://twitter.com/2030mirai/status/1377939496642113541 
自閉症の特性はみんなにあると示した画期的な研究  https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00112/00041/?n_cid=nbponb_twbn 
時間軸でも変化があるというのには納得。
確かに子供の頃は「何か違う」と思いつつ、若さ由来の記憶力や頭の回転で定型発達の人と変わらない生活ができてたので、老化で本来の障害が露見するパターンはあるあるだなぁと思う
考えてみれば、「発達」は時間とともに変わることを前提にした概念だ。
定型だろうが非定型だろうが、その時その時に出てくる特徴が変わって当たり前だ。それなのに、こういった「時間変化」は見逃されることがあるそうだ。 https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00112/00041/?n_cid=nbponb_twbn 
記事読ませて頂いて、目からウロコ。
18年間通院しているメンクリの主治医にさえADHDと指摘されることなく生きてきた。が、幼い頃は動作の遅さが目立った(今はさほどでもない)。今は自分のことは後回し、が癖になっているが、小1の頃は挙手しても指名されないと声に出して先生に抗議したり、  https://twitter.com/akinaln/status/1275219620631199745 
塾で好きな年上男児が離れた席に行くと近くの席に移動したりと、衝動的言動が目立っていた。運動音痴・方向音痴等、幼い頃から変わらない特性もあるが、大人になってから目立つようになった特性もある(後回し癖等)。特性の出現・消失は、生活環境の変化にも左右されているように思うが、
ある一時期の状態のみ診て診断する危険性と、通時的観察の必要性を記事を読んで強く感じた。
載ってるグラフ、ペアトレの資料にあったな
誰にでも傾向はあるんですよって話があったとき、知るってのは大事だなぁと思ったよね  https://twitter.com/akinaln/status/1275219620631199745 

補足

下記論文では全体的な分布は連続しているように見えるけど、
taxometric分析やfactor mixture modelで部分母集団を仮定するモデルを検討すると
連続的なモデルよりも質的に異なるサブ集団を想定するモデルの方が妥当という知見あり。

The Latent Structure of Autistic Traits: A Taxometric, Latent Class and Latent Profile Analysis of the Adult Autism Spectrum Quotient

自閉症の特性は、連続体であると広く考えられている。この仮説を検証するために、成人自閉症スペクトラム指数のデータを用いた計量分析を行ったところ、ほとんど支持を得られなかったが、重症度の高い分類群が確認された。その結果,6つの異なるサブタイプが存在することが示された。すなわち,自閉症的特徴を支持する可能性がほとんどないグループ,「システム化」行動に従事するグループ,WingとGouldの自閉症的三要素の複数の要素を支持する3つのグループ,そして以前に同定された分類群と類似したサイズとプロファイルを持つグループである。これらの分析結果は,AQ(およびその延長線上にある自閉症的特徴)がカテゴリー構造を持つことを示唆している。これらの発見は,AQデータの分析と解釈に重要な意味を持つ。

引用元はこちら
てか、連続的かどうかはそういう分析しないとわからないよね。
一つの山の外にもう一つ山があれば目視でわかるけど、山の中にちっちゃい山が埋もれてたら目視じゃわからないので。
この話を聞いてから、精神医療の世界では病気に対するカテゴリカルな理解とディメンショナルな理解についての議論が深まっていると知りました。後者はスペクトラムを前提
スポンサーリンク
\他サイト様最新記事/
\新刊ランキング/