ダウンロード - 2019-07-14T151856.911
「統合失調症」、「双極性障害」、「うつ病」、「不安障害」、「心的外傷関連障害」といったDSM-5の精神医学的ラベリングが、
説明できているかのような錯覚を引き起こすだけで、
科学的にはほぼ意味がない
とするメタアナリシス論文が出た。
首肯できる点が多々ある。
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主な結果は以下。

①精神医学的診断はすべて異なる決定規則を用いている

②各症状には他の診断の間でかなりの重複がある

③ほぼ全ての診断は、心的外傷と他の有害事象の役割を覆い隠している

④診断は個々の患者の詳細について何も教えず、彼らにどんな治療が必要かも教えてくれない。
この研究は

「精神医学における生物医学的診断アプローチが目的に適していないことも証拠立てている。…この診断システムはすべての苦痛が各障害に起因すると誤って想定し、何が正常であるかの主観的判断に大きく依存する」

とも。診断間の重複は、実用的な柔軟さは確保できても診断モデルを脆弱にする。
この辺りに関心がある方に、日本語で読めるものとして下記はおすすめです。

A.フランセス『<正常>を疑え』(講談社)
R.ウィタカー『心の病の「流行」と精神科治療薬の真実』(福村出版)
R.クーパー『精神医学の科学哲学』(名古屋大学出版会)
A.クラインマン『精神医学を再考する』(みすず書房)

反応・感想

凹凸ちゃんねる、社会不適合界隅どうすんのこれ。
面白い。DSM-5に関する批判ですが、development disorderは入っていませんね。
長年複雑性PTSDやAC関連の本を読み漁ったのですが、納得のいく論文です。
無数の枝葉の木も幹は一本であるように、ここに上がってるような症状は、根底の部分では同じものが流れてると思います。
しかしそれが「何」なのか、対策はどう打つのかとなると
一気に脆弱なもの(投薬や認知療法)になる。
あのラベリングかえってわかりづらく感じる時がある。
結構精神疾患や人格障害は被ってるものが多いように思われるし。余計患者の「顔」が見えづらくなるような気がする。
DSM-5ありきな日本の精神医学に非常に疑問を感じておりました。

古い精神科医は長期的な経過観察を大切にします。
若い精神科医はカテゴライズしがちです。
医療制度のあり方も見直すべきかと。
これスゴい論文…なのかなあ。

診断=精神医学的ラベリングと、症状の有無や重さや患者が感じる苦しみの大きさ・困り度って、そもそも、リンクするようなしないような、そんな感じだよな~とずっと思ってましたし、主治医も普通にそう語ってくれてた。

論文になったこと自体がスゴいのかな?
原文は「各精神疾患を明確に線引きするツールとしては、科学的には、役立たない」。
これは特に目新しい主張ではなく、ずっと以前から知られていたことです。
精神疾患は、社会的に患者をどう扱うかで診断を下してるんだと思っていました。
フーコーを思い出す。ラベリングされることで視覚化され区別される。
ある精神状態のまとまりに、ある名前をつけてそう呼んでいるだけ。

あくまでも人間が作った仮想概念(考え方・とらえ方)であって、他の身体疾患のように実体を持ったものではない。

『うつ病だから落ち込む』
ではなく
『ある特定の落ち込む状態を「うつ病」と呼びましょう』
新しい評論では出始めてますねー。
ただ公的福祉等を受けるには対象になってる病名でないとダメなので、
行政の対応の遅れもあるかなと。
精神科医は患者の状況に応じて投薬治療で回復を試みるのが第一義で、支援制度の絡みもあるので、複合要因で絡んだ病の糸は、ゆっくり一本ずつ解くしかないんだなって

※補足

これ、メタアナリシスなのかな…
これ、メタ解析ではないでしょう。原著論文をきちんと読んでほしい。
原著を読むと、メタ解析ではなくthematic analysisを用いています。
そこだけでも訂正を…。
また、著者らの解析は診断の上下関係を考慮しておらず、DSMをアンチョコとして使うレジデントのような調べ方になっているようにも思えます。
原著は診断基準DSM-5の本文をテーマ分析して各疾患の診断基準を比較したもので
臨床試験のメタ解析ではない。

そして
診断には上下構造がある点(下位診断には上位診断の除外が必要)が考慮されていない。

この論文の紹介に"scientifically meaningless"という見出しをつけるのは明らかな飛躍であり不適切
精神疾患の病態は依然明らかでない部分が多く
病態に基づく完全な分類は現時点で作成できない。

現存の診断基準は症候中心で
各疾患の病態が均質である保証はない。

だが共通の基準に基づく疾患ラベルが存在しなければ統計すらとれず、
研究テーマを共有してデータを蓄積する営みすら不可能となる。
既存の疾患ラベルに基づき治療・経過・予後のデータも集約されており、
症候が類似していても診断により有効が見込める治療戦略は異なる。

診断には上下関係があり、
概して見落とすことで治療成績が大きく低下する疾患ほど上位に位置する。
項目に重複が見られるからといってmeaninglessとは言えない。
診断基準はアップデートされているし、
各疾患群の生物学的な均質性を検討する研究もいくつか行われているし(https://twitter.com/tociss
RDoCなど研究用の分類を新たに整理する試みも行われたりしている(https://t.co/iHLmhEgpf0

ので、現状の症候学的分類に批判はあれど長い目で見てほしいという気持ち
診断基準を含めた現状の精神医学の課題についてはこの文献でよく整理されていて参考になる
Charting the landscape of priority problems in psychiatry

part1
http://www.thelancet.com/journals/lanpsy/article/PIIS2215-0366%2815%2900361-2/abstract …
part2
http://www.thelancet.com/journals/lanpsy/article/PIIS2215-0366%2815%2900360-0/abstract …
下記のツイートがすこしバズっていて、ご批判を頂いた。
メタアナリシス論文と書いたところは完全に僕のミスで、DSMのテクスト分析でした。
申し訳ありません。
また科学的に意味がないという表現は、原著では、診断に際して選言的カテゴリでは科学的に意味がないと、参照をもとに述べられています。
それを念頭に、執筆者のKate Allsopp先生もインタビューで語っているのだと思います。
ですので特に真新しいものではないかもですが、DSMがもつ操作性と科学性の折り合いに関する問題提起のひとつとして受け取りました。
この論文の評価については様々だと思いますし、今後どうなるかは気になります。
引用元
うつの医療人類学
うつの医療人類学
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北中 淳子
日本評論社
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