「恥ずかしいのは先生です」

内山 登紀夫(福島大学大学院医学研究科 人間発達文化学類・教授 よこはま発達クリニック院長)

幼児期から診させてもらっている小学4年生の自閉症スペクトラムの女児Aちゃん。

学校では時々トッピな行動をして周囲をハラハラさせることがあるが,
基本は真面目でルールを厳格に守るタイプ。
厳格すぎて周囲から浮いてしまうこともある。

落ち着きはないが,勉強好きであまり問題行動もなかった。
教師も上手に支援しているようであった。

あるとき担任教師から,
暑いと授業中でもTシャツを脱ごうとする,何度注意してもわかってくれない,
何か良い方法はないかと相談を受けクラスで面談した。

「どうしてTシャツ脱いじゃうの?」
「暑いからです」  
「でもそれは恥ずかしいよね」  
「どうしてですか?」  
「だってもう4年生だから女の子が上半身裸になったら恥ずかしいよね」  
「男の子は良いんですか?」  
「まあ,男の子も授業中に上半身裸になったらいけないよね」  
「じゃあ,なんで女の子だからって言うんですか?」  
「そっか,ごめん,男の子も女の子も脱ぐと恥ずかしいから,やめようね」  
「恥ずかしくないです。男の子も恥ずかしくないし。女の子も恥ずかしがる子と恥ずかしがらない子がいると思います。私は恥ずかしくないタイプです」  
「そっか,そうだね。エーと,なんて言うのかな……」  
「先生,困っているみたいですね……(しばし沈黙)。あっ,もしかしたら恥ずかしいのは先生ですか?」  
「えっ……あ,そうだね。恥ずかしがっているのはAさんじゃなくて先生かも」  
「そうなんだ,私が脱ごうとすると担任のB先生も恥ずかしそうでした」  
「そうだね」  
「だったら,わかりました」  
「?」  
「先生たちが恥ずかしいんだったら,暑くても脱ぐの我慢します」  
「そっか,ありがとう」  
「最初から,そう言ってくれれば良かったのに……」  

特に解説不要だろう。

自閉症スペクトラムの子どもや成人と話していると,自分たちの偏見や不合理性に気付かされることが多く,答えに窮することも少なくない。

素直に説明すればわかってくれることも,
大人の勝手な思い込みで無理に納得させようとすると失敗する。

成人でも子どもでも,
「○○だから,こうしなさい」とか,
「○○が社会のルールだ」と教え込もうとするより,
こちら側の気持ちを素直に伝えることで問題が解決することもある。

Aちゃんは時々「へりくつをこねる」と教師や親から怒られていたが,
「へりくつ」を言っているのは大人のほうかもしれない。

http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03098_01
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私のことかと思った
これASD当事者としてすごい理解できます。
ああーなるほど....
教室で着替えるのは、周りの見てる人が恥ずかしいからやめてほしい、なら確かにわかる。高校の時に朝、教室で着替えてた。
とてもいい勉強になりました。この視点は、なかったけど、とても、大切な視点ですよね。
この手の困難はASDには多いよねぇ。
この場合は先生が分かってくれたから噛み合ったけど、大人の都合を言語化して突き付けられると、逆ギレ起こす大人は多いんですよ。
大人の心って、深層の相対化とか嫌で嫌でたまらないから。
常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションであるって誰かさんも言ってたしな🤔
我が子(3歳7ヶ月)は今の時点で自閉症などの様子はない(ように見える)が、危険なことやマナーなど、何度注意をしても伝わらず伝え方で悩む事が多い。これは是非試してみたい。
もしかして、私がすっぴんだと恥ずかしい人がいるのか…⁉︎そういうことなのか‼︎
私もこれだった。
小学校高学年になっても「恥ずかしいもの」という実感が薄くて、
ただ「そうすると昔から大人が怒るから」人前ではやらなかった
問題は大人の前だとやらないんだけど、同級生の男子とかに「見せて」って言われると怒られない=嫌がる理由がないので「いいよ」って言っちゃうところ
恥を「かく」
恥を「かかせる」

どちらも理解した時「恥を知る」
と言うんだろうな
これ、凄いよく分かる。

子供の時から俺はこの少女と同じ価値観で生きているのかもしれない。

納得がないまま、アイツは屁理屈ばかりと言われる人生を、今も生きてる。
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